「問いを立てる力」が未来を拓く――研究者の姿勢で学ぶ
5月26日(火)、中学1年生の希望者を対象に、Zero to One(ゼロワン)にて大橋学園長による特別講話が開かれました。入学式から約2ヶ月ぶりとなる学園長からのメッセージ。「これからの時代に必要な力」を現代社会の議論とサイエンスの視点から解き明かす、充実した時間となりました。

先駆者たちに共通するもの――「気づき」の力
講話はひとつの問いかけから始まりました。スクリーンに映し出されたのは、柳井正氏、スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾス、孫正義氏、そしてiPS細胞の山中伸弥先生——。「この人たちの共通点は何でしょう?」世代も国も分野も異なるこれらの人物に共通するのは、誰もまだ気づいていなかった「何か」を発見し、そこから新しい流れを生み出したことです。「気づくか、気づかないか。それが時代を変える最初の一歩です」と学園長は語りました。

世界恐慌とケインズ――仮説と検証が「0」から「1」を生んだ
「気づき」の力を象徴する歴史的事例として、学園長は世界恐慌とケインズを取り上げました。1929年、株価は90%下落し、4人に1人が職を失う未曾有の危機の中、伝統的な経済学者たちは「自然に回復する」と主張し続けました。しかしケインズは既存の常識を疑い、独自の論理的なアプローチで不景気の原因を解明。「有効需要」という全く新しい理論を打ち立て、公共事業による経済回復という解決策を導き出しました。「100年前には誰も想像しなかった『1』を、研究者の姿勢が生み出した」。日常の些細なことに疑問を持ち、年齢に関係なく「研究者たる姿勢」で学ぶことの大切さを、学園長は生徒たちに語りかけました


AGIの時代と内発的動機――自分の中から湧き出る問い
AIが人類の知能を超える「シンギュラリティ」が現実的に議論される今、外から与えられた目標だけで動く時代は終わりを迎えつつあります。学園長は、これからの時代に最も必要な力として「内発的動機」を挙げました。自分の内側から「知りたい」「なぜだろう」という問いが湧き出ること。そしてその問いに仮説を立て、検証し、深めていく姿勢こそが、次の時代を切り拓く力になると語りました。「知らないことを知る」というメタ認知の姿勢が、その出発点です。


「奴雁(どがん)」の精神――学びは社会への貢献へ
講話の終盤では「奴雁(どがん)」という言葉が登場しました。雁の群れの中で、食事をせずに仲間の安全を守るために見張り続ける一羽のことです。「皆さんが学ぶ究極の目的は、自分が属する社会や世界をより良くすることです」。三田国際の学びは試験のためではなく、自分の考えを持ち、信念を育て、社会に貢献できるリーダーを育てるためにある——その言葉が、会場全体に深く響きました。


講話後は、多くの生徒が残って質問をしていました。「メタ認知を高めるにはどうすればいいか」——講話の核心を突く問いが続き、まさに「気づき」を実践するような時間となりました。研究者の目で世界を見つめ、自らの問いを育てていく。その第一歩を踏み出した中学1年生の姿の今後の活躍が期待されます。

