本校教諭および生徒共著の論文が掲載されました

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茨城県にゆかりのある昆虫の愛好家グループである水戸昆虫研究会が発行する『るりぼし』(第47号)に、本校の川村玄季教諭らによる論文が掲載されました。この論文には高校メディカルサイエンステクノロジーコース(MSTC)1年の横山景星君も共著として名を連ねています。論文の概要や研究活動の内容とあわせて横山君へのインタビューをご紹介します。

茨城県には247種のカミキリムシが・・・

掲載された論文のタイトルは「茨城県下におけるカミキリムシ科甲虫の記録補遺」です。これまで茨城県下では、研究者・愛好家たちの尽力によって247種のカミキリムシ科甲虫が記録されてきました。この論文では、それらのうち、近年の記録に乏しいものや、その地点で初めての記録と思われる計12種を採集したことを報告しています。

 

カミキリムシ類は植物に依存した一生を送り、複数の植物を利用する種・特定の植物を利用する種がいることから、その分布調査をすることによって、その地域の森林環境などを客観的に評価することができ、茨城県がどういう土地なのかということが浮き彫りになります。

研究の世界にたずさわることの責任

MSTCの1年生は、各自テーマを設定して研究活動に取り組んでいます。横山君は現在、カミキリムシ類成虫の頭部幕状骨の形状からアプローチして、その分類体系を見直す研究をしています。頭部幕状骨は頭部における様々な筋肉の付着点となる骨格のような構造で、これを調べるためには1cmにも満たないような小さなカミキリムシの頭部の筋肉をとかし、頭の上の皮をはがして観察しなければなりません。【写真=薬品に浸けられたカミキリムシの頭部】

 

その研究の関連として今回の論文にも参加することになり、横山君が担当したのは採集した12種のうちのひとつ、ビャクシンカミキリに関する記述です。文献や採集記録にあたって、以前の採集記録地点との関連性を見出し、どのように移動して分布が拡大しているのかを考察しています。

 

自身の研究や、論文に取り組んだ感想について横山君は次のように話してくれました。

 

「高校に上がって研究を始め、研究者って甘くないということを知りました。観察をするのも、論文を書くのも、正確でなければならず、少しのミスもゆるされないのですが、新たな発見ができるなど、その分達成感もあります。使命感を持っていないとできないものだと感じています。」

 

私たちの多くは、キレイ、おもしろい、かっこいい、といった単純に見たままの外見的特徴で昆虫を見ていると思います。けれど分類学の世界では、先述のように顕微鏡で細部の構造を観察し、どう同じで、どう違うのかを見極め、そして進化の中でのお互いの関係性を明らかにしていきます。【写真=ビャクシンカミキリの標本(中央の3匹)】

 

「父の実家が自然が豊かな長野にあり、小さい頃から昆虫が好きでした。当時は、図鑑にある昆虫の背中の絵や写真を見て『これ』と決めつけていましたが、分類学の世界に入ることで、ここまで詳しく見ている人がいるからこそ、自分の小学校、中学校時代があったんだと思い知りました」(横山君)

 

論文の内容は、12種のカミキリムシの採集した場所や過去の記録、分布に関する考察などといったもので、難しいことが書かれているわけではなくとてもシンプルです。ですが、そのひとつひとつの記述や記録には、たずさわった人の熱意や責任感などがぎゅっと凝縮されていることが感じられます。

 

私たちが「この昆虫とこの昆虫は同じものだ」とわかることができるのは、研究者や愛好家らの地道で誠実な活動の賜物であり、横山君もまたその世界の一端を担う者としての厳しさや責任を、ひしひしと感じているようでした。

 

*掲載された論文は残念ながらオンラインで読むことはできません。サイエンスラボに置いてありますので、在校生の皆さんはぜひ読んでみてください。

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