行事
行事
9月10日(月)から13日(木)の4日間、中学3年生は修学旅行としてGlobal Peace Study(以下GPS)を実施しました。訪ねるのは広島と京都で、前半の広島では、留学生リーダーとともに宮島と広島市内をめぐり、観光や平和に関するフィールドワークを行いました。
9月10日(月)、東京駅に集合した一行は新幹線で広島へ。およそ4時間の車中では、広島に関するクイズ50問に挑戦したり、終始和やかに過ごしました。到着した広島駅で出迎えてくれたのは今回広島での行程をともにする留学生リーダーです。フェリー乗り場のある宮島口までバスで1時間程度。車内ではリーダーたちと自己紹介をし、最初の目的地・宮島でのフィールドワークの内容についてあらためて確認を行いました。
参加しているリーダーたちは、英語を母国語としない国や地域から日本に学びに来ている留学生です。なかには中2で実施したGlobal Villageで一緒にグループワークをした留学生もおり、生徒は再会を喜んでいました。ここからはすっかりおなじみとなった3つのルールー(1)Don’t be shy. (2)Speak English. (3)Mistakes are O.K.ーのもと、リーダーとともにミッションをクリアしていきます。
1日目、宮島でのミッションは「宮島へ◯◯国から観光客を呼び込もう!」というもの。宮島の観光スポットをリーダーとめぐって写真や動画などを撮影し取材をして、1枚のシートに宮島の魅力をまとめます。生徒たちは厳島神社や五重塔、千畳閣などを訪ね、手水舎やお参りの手順、おみくじの意味などについて、苦労しながらもリーダーに英語で説明していました。
当日は干潮だったので、普段は海の中に立つ大鳥居のそばにも行くことができました。お土産屋さんや飲食店が集まる表参道商店街も散策し、焼きガキやもみじまんじゅうといった名物を味わい、鹿ともふれあいながら、宮島をひとめぐりしました。
シートには、どの国の人にアピールするか考えた上で、宮島の魅力を簡潔な英文で紹介しながら、厳選したフォトジェニックな3枚の写真を掲載します。散策を終えた生徒たちは周辺のベンチなどに集まって、リーダーと相談しながら写真を選んだり、タイトルを考えたりしてシートを仕上げていきます。
夕方、ミッションを完了した一行は宮島を発ち、ふたたび広島駅方面へ。1フロアに16軒のお好み焼き店がひしめく「ひろしまお好み物語駅前ひろば」で夕食をとります。目の前の鉄板で焼かれる、肉、玉子、そば、イカ天に、ネギが山盛りの「THE・広島」なお好み焼きを、カウンター席で肩を寄せ合いほおばりました。
9月11日(火)、2日目は広島市内でのミッションです。広島平和記念資料館を起点に、原爆ドームや平和記念公園内に点在するモニュメント、公園周辺に遺る被爆建物などをグループごとにリーダーとめぐります。まずはウォーミングアップとして、朝食後にホテルでリーダーにインタビューをしました。
インタビューのテーマは「留学生から見た広島・長崎とは?」。広島・長崎と原子爆弾に関わる出来事についてどのように学んで来たのか、世界から核兵器をなくすことはできるかどうかなどについて質問をしました。テーマについてお互いの認識を確認した上で、フィールドワークに臨みます。
このGPSの全体テーマは「広島で起こったことを世界の課題解決にどのように活かすことができるのか?」という問いです。この問いを考えるにあたり、生徒たちは中2の終わりから事前学習を積み重ねてきました。たとえば、2016年にオバマ前米大統領が広島を訪問して行ったスピーチについてその内容や賛否両方の意見を分析したり、戦時中の広島を生きる人々の日常を描いた映画『この世界の片隅に』を鑑賞したりして、広島と原爆の過去と現在について考えるとともに、国語の授業でシリア難民について「自分がその立場だったら」と置き換えて考えたり、難民支援を行う国連UNHCR協会による講演会を聞いて学んだりしました。
市内をフィールドワークする際のミッションは2つ。まずは「原爆に関する10の質問」です。「なぜ原爆ドームは世界遺産に選ばれたのか?」「核兵器廃絶に向けた世界の取り組みは?」「原爆ドーム以外にどのような被ばく建物が現存しているか?」といった10の質問から5つ選んで、その答えを資料館や周辺をまわって探します。
もうひとつのミッションは「広島への来訪者のインタビュー」です。広島を訪れている外国人にインタビューを依頼し、「どうして広島に来ようと思ったのか」「世界のどのリーダーに広島を訪れてもらいたいか」「人類は広島の歴史をどのように活かすべきだと思うか」など、質問を投げかけます。
見知らぬ外国人に声をかけることはやはり勇気のいることで、はじめの一声に二の足を踏んでいるグループも多く見かけました。しかし、リーダーに促され少しサポートもしてもらいながらインタビューを終えると、今度は率先して声をかけに行くようになり、「このことを聞いてみたい」という思いが芽生え、自発的な質問もできるようになっていました。
先日の記事(リンク)でもご紹介したように、事前学習での学びも含め、GPSでのフィールドワークはeポートフォリオに記録していきます。ポートフォリオには行ったミッションの記録とともに、必ず取り組みながら気づいたこと学んだことについて、自分の言葉、写真、図などで残し、振り返りの時間も設けられます。
こうした行動ログを残したり、振り返りの作業があることで、生徒はミッションに取り組んでいる最中も、ただこなすべき作業として取り組むのではなく、自分の中に起こる変化や、コミュニケーションを通して触れた異なる価値観に対して意識的になり、次の主体的な行動を促し、探究心を呼び起こします。
実際、フィールドワーク中の生徒たちは、資料館の調査、インタビュー、ワークブックへの記録という一連のステップを踏みながら、「ほかにもインタビューしてみよう」と発案したり、公園のベンチに集まってグループでさかんに意見を交わしながらメモを残したり、より自覚的、積極的になっていく様子がうかがえました。
フィールドワークを終えた生徒たちが取り組む最後のミッションは「広島を訪れてもらいたい世界のリーダーへのインビテーション(招待状)ポスター制作」です。誰に訪問してもらいたいか、なぜそう考えるのか、そして何を見てもらい、訪問後にその国々対してどのようなことを期待するか。フィールドワークで取材したことをもとにグループで話し合ってデザインし、最後には英語でポスターセッションを行います。
色とりどりの紙を用いたり、コミカルに世界のリーダーの似顔絵が描かれたりと、勢ぞろいしたポスターは一見華やかに見えます。しかし、その一枚一枚に表現されているのは、広島に来る前に考えたこと、現地で見たもの聞いたことへの悲しみや怒り、言いしえない衝撃、平和な世界であって欲しいという率直な願いであり、言葉にならないさまざまな思いが詰まったものでした。
9月12日(水)、広島から京都へ移動し、ここからはグループごとの自主研修になります。ここでは生徒たちが撮影して選んだ「ベストショット」をほんの一部ですがご紹介します。